フランチャイズは魅力的なビジネスモデルですが、その背後には複雑な法的要素が存在します。本記事では、フランチャイズと弁護士の関係性について詳しく解説し、成功への道筋を示します。
1. フランチャイズとは何か
フランチャイズは、大手企業(フランチャイザー)が自社のブランドやビジネスモデルを個人や中小企業(フランチャイジー)に提供し、その代わりにロイヤリティやフランチャイズ料を受け取るビジネス形態です。これにより、フランチャイジーは既存のブランド力とノウハウを活用してビジネスを始められる一方、フランチャイザーは事業拡大や市場シェアの拡大を図ることができます。
例えば、有名なファーストフードチェーンやコンビニエンスストアが全国各地に展開されているのは、このフランチャイズモデルによるものですが、現在ではもっと小規模な企業がフランチャイザーとなるフランチャイズ契約も増えており、紛争件数も増加傾向にあります。
2. フランチャイズ契約(FC契約)の基本構造
フランチャイズ契約(FC契約)は、フランチャイザーとフランチャイジーの関係性や双方の権利・義務を明確にするために取り交わされるものです。必ずしも書面による必要はありませんが、通常はフランチャイズ契約(FC契約)で定められる内容は多く、多様であるため、書面によって締結されます。契約書面で定められる主な内容は以下の通りです。
契約期間と更新条件
契約期間が10年間と定められている場合、その後の更新条件はどうなるのか。自動更新なのか、再契約が必要なのかを確認します。あるフランチャイズでは、初回契約期間終了後の更新には追加のフランチャイズ料が必要となるケースもあります。
ロイヤリティと加盟金
毎月の売上の5%等一定の割合をロイヤリティとして支払う契約が一般的です。最近では、ロイヤリティとは別に契約時に加盟金(フランチャイズ料)として数百万円等を一括で支払う必要がある場合もあります。
例えば、A社のフランチャイズでは初期費用300万円と毎月の売上の6%のロイヤリティが設定されています。
ブランドおよび商標の使用権
ブランドのロゴや商標を店舗や商品に使用する権利が付与されます。しかし、一般的にはブランドイメージを損なう行為は禁止とされており、広告物や販促活動については、独自のキャンペーンを行う際は事前に本部の承認が必要とされる等、フランチャイザーの指示に従う必要がある場合が多いといえます。
営業地域の指定
フランチャイジーに対して、一定の地域での独占販売権が与えられる場合があります。例えば、半径5km以内には同じブランドの店舗が出店しないことが契約で保証されているケースです。これにより、フランチャイジーとしては市場の過密化を防ぎ、安定した集客が期待できます。逆に、このような制限がない場合に、フランチャイジーとしては後から別のフランチャイザーが近いエリアで開業する場合があることを織り込んで契約をする必要があります。
教育・研修制度
フランチャイジーは、開業前に商品知識や接客スキルの研修を受けることが義務付けられていることがあります。例えばC社では、2週間の研修プログラムが提供され、研修費用は契約料に含まれています。また、定期的なスキルアップ研修が行われることもあります。
競業避止義務
契約期間中および終了後一定期間、フランチャイジーが同業種のビジネスを行うことを禁止する条項が定められることがあります。例えば、D社の契約では、契約終了後2年間は同じ地域で同業種のビジネスを行ってはならないと定められています。この条項を違反すると、違約金が発生する場合もあります。
契約内容を十分に理解し、疑問点は弁護士に相談することが重要です。曖昧な点を放置すると、後々トラブルの原因となります。
3. フランチャイズにおける法的リスク
フランチャイズビジネスは魅力的ですが、その背後にはさまざまな法的リスクが潜んでいます。想定例を挙げて説明します。
契約内容の不備のリスク
例:Gさんは、有名な飲食店チェーンのフランチャイズ契約を結びました。しかし、契約書に「フランチャイザーは経営方針を適宜変更できる」という曖昧な条項が含まれていました。結果として、フランチャイザーが同条項に基づく措置として一方的にメニューや価格設定を変更し、Gさんの店舗は顧客離れに悩まされることになりました。
情報の非対称性のリスク
例:H社は、フランチャイズ契約を結ぶ前にフランチャイザーから予想売上高の情報を提供されました。しかし、実際にはその数値は過大なものであり、地域の市場調査が不十分でした。結果として、H社は期待していた利益を得ることができず、多額の負債を抱えることになりました。
知的財産権の侵害のリスク
例:Iさんは、フランチャイザーの許可なく独自の商品を開発し、ブランド名を使用して販売しました。これにより、フランチャイザーから商標権侵害で訴えられ、多額の損害賠償を請求されました。
独占禁止法違反のリスク
例:フランチャイザーであるJ社は、フランチャイジーに対して特定の商品を高値で購入するよう強制しました。また、他の仕入先からの購入を禁止していました。これが独占禁止法の「不公正な取引方法」に該当し、公正取引委員会から指導を受ける事態となりました。
労働法上のリスク
例:Kさんの店舗では、従業員に長時間労働を強いていました。フランチャイズ本部の売上目標を達成するためでしたが、従業員から労働基準監督署に訴えられ、労働基準法違反として是正勧告を受けることとなりました。
上記は一例に過ぎませんが、こういったリスクを事前に認識し、適切な対策を講じることが重要です。特に契約内容の確認や法令遵守に努めることで、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。
4. 弁護士が果たす役割
弁護士は、フランチャイズビジネスにおける法的リスクを軽減し、ビジネスを成功に導くための重要なパートナーです。一般的には、顧問契約をして顧問弁護士として契約書のレビュー(リーガルチェック)を行い、日常的な相談に応じることで紛争を予防し、紛争が起きた場合でも早期解決を実現するのが弁護士の役割といえます。
4.1 契約書の作成・レビュー
想定例
Lさんは、新たにフランチャイズ契約を結ぶ際、弁護士に契約書のレビューを依頼しました。弁護士は、契約書に以下のような不利な条項を見つけ出しました。
一方的な契約解除権:フランチャイザーが理由なく契約を解除できる条項
過度な競業避止義務:契約終了後も5年間、同業種でのビジネスを禁止する条項
弁護士の助言により、Lさんはこれらの条項の修正を交渉し、より公平な契約内容で合意することができました。
4.2 紛争の予防と解決
想定例
M社は、フランチャイザーとの間で広告費の負担割合を巡って紛争が発生しました。フランチャイザーは広告費の全額をフランチャイジーに負担させようとしていました。弁護士が間に入り、契約書の条項をもとに交渉を行い、広告費を双方で折半することで合意に至りました。
4.3 法令遵守とコンプライアンス
想定例
Nさんは、新たにフランチャイズ店舗を開業するにあたり、労務管理に不安を抱えていました。弁護士は、労働基準法に基づいた就業規則の作成や、雇用契約書の整備をサポートしました。また、定期的な労務監査を行うことで、従業員とのトラブルを未然に防ぐ体制を構築しました。
5.関連法規・ガイドライン
フランチャイズ契約に関連する法規としては、中小小売商業振興法、独占禁止法、商標法、不正競争防止法等、フランチャイズ契約(FC契約)の当事者が押さえておきたい法令はいくつかありますが、特に独占禁止法との関係で公正取引委員会が策定したフランチャイズガイドラインは、基本的な考え方の指標となりますので、必ず目を通しておくことをお勧めします。
また、業界の自主基準として、一般社団法人日本フランチャイズチェーンの倫理綱領、開示自主基準も参考になります。
6. まとめ
フランチャイズビジネスには多くのメリットがある一方、法的リスクも潜んでいます。具体例を通じて見てきたように、弁護士のサポートは以下の点で重要です。
フランチャイズ契約は、契約書だけでなく契約前の情報の開示やフランチャイザーの説明に欺瞞性がないか等の確認を重要です。契約前から弁護士が関与することで、契約書の不公平な条項を排除し、将来的なトラブルを防ぎます。
また、契約締結後も、法令遵守をサポートすることで、行政からの指導や罰則を避け、信頼性のあるビジネスを確保し、フランチャイザーや第三者との紛争に至った際には、顧問弁護士としてクライアントの言い分を法的根拠を持って主張し、できる限り早期の解決を図ることができます。
このように、弁護士が関与することで、フランチャイズ契約の法的リスクを低減し、安心してビジネスを展開することができます。
最後に
フランチャイズに関する法的な疑問や不安がある場合は、迷わず専門の弁護士に相談することをお勧めします。適切な法的サポートを受けることで、その後の紛争を予防し、あるいは紛争の拡大を防ぐことができます。
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