株主総会

弁護士が解説する株主総会のポイントと法的留意点


はじめに

株主総会は、企業の最高意思決定機関であり、株主が経営に関する重要事項を議論・決定する場です。しかし、その運営には法的な知識や注意点が多く含まれており、適切に対処しなければ法的リスクに直面する可能性があります。ここでは、弁護士の視点から株主総会のポイントと法的留意点を詳しく解説します。


目次

  1. 株主総会の重要性と目的
  2. 弁護士が関与するメリット
  3. 株主総会準備の流れ
  4. 当日の進行と注意点
  5. 法的リスクの回避とコンプライアンス
  6. 株主総会後の対応とフォローアップ
  7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

1. 株主総会の重要性と目的

1-1. 株主総会とは

株主総会は、株式会社の最高意思決定機関として位置づけられています。そのため、ほとんど全ての会社の意思決定を株主総会で決定することができますが(会社法295条1項)、特に、以下のような重要事項が決定されます。

  • 取締役等の役員の選任・解任
  • 役員報酬
  • 定款の変更
  • 合併・会社分割、解散などの組織再編
  • 株主の権利に直接関係する事項
  • 計算書類の承認

ただし、取締役会設置会社においては、取締役会による機動的な経営上の意思決定を可能にするため、株主総会は会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議をすることができるとされている点には注意してください(会社法295条2項)。

1-2. 株主総会の種類

  • 定時株主総会
    事業年度ごとに開催され、決算報告などが行われます。
    定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければならないとされていますので(会社法296条1項)、株式会社は必ず年1回は株主総会を開催する必要があります。
    開催時期については法律の定めはありませんが、一般には決算終了後2〜3ヶ月後を目安として開催し、前期決算評価や今期経営方針の策定を行うことが多いようです。
  • 臨時株主総会
    必要に応じて開催され、特定の議題について議論します。
    臨時株主総会は、必要がある場合にはいつでも招集できますので(会社法296条2項)、開催時期については制限がなく、会社に関する重要な事項を決定する緊急の必要性が生じた場合などに開催されます。

2. 弁護士が関与するメリット

2-1. 法的リスクの軽減

株主総会の運営には、会社法をはじめとする法令遵守が不可欠です。弁護士が関与することで、招集手続や議事進行における法的リスクを軽減できます。

2-2. トラブル対応

株主からの異議申し立てや質問に対し、適切な対応策を迅速に提示できます。特に、総会荒らし対策など専門的な対応が求められる場合に有効です。

2-3. コンプライアンス強化

企業のガバナンス(統治)強化にもつながり、株主や社会からの信頼性を高めます。


3. 株主総会準備の流れ

3-1. 日程と場所の決定

  • 日程の決定
    定時株主総会は、事業年度終了後、一定期間内に開催します。
  • 場所の選定
    法律上は開催場所については、招集事項を定める際に、毎回個別に決定します(会社法298条1項1号)。ただし、これまで株主総会を行なっていた場所と著しく離れた場所で開催する場合、その理由を明確にする必要があります(会社法施行規則63条2号)。
    また、株主の参加に著しい支障が生じる場所で開催する場合は、株主総会決議の取消事由となり得ますので(会社法831条1項1号)、この点には注意する必要があります。
  • バーチャル株主総会(オンライン開催)
    バーチャル株主総会は、インターネット上(オンライン)で参加できる株主総会です。実際の会場を用意してオフラインでも開催されることを前提にオンライン参加もできるハイブリッド型と、オンラインのみで開催されるバーチャルオンリー型の2つに分類されますが、後者は上場企業であること等の要件があるため、ほとんどの会社では前者のハイブリッド型を利用することになります。
    なお、ハイブリッド型は、オンライン参加の株主に議決権等を認めない「参加型」と、議決権等を認める「出席型」の2つに分かれます。

3-2. 議案の作成と確認

  • 議題の明確化
    総会で決定すべき事項を株主に理解しやすい形で提示します。
  • 法令チェック
    決議事項や決議方法が会社法に適合しているか確認します。

3-3. 招集通知の作成と送付

会社の招集通知には、次の事項を決定して記載する必要があります。

・株主総会の日時・場所 株主総会の目的事項
・株主総会に出席しない株主の書面による議決権行使を認める場合は、その旨
・株主総会に出席しない株主の電磁的方法による議決権行使を認める場合は、その旨
・その他会社法施行規則63条で定める事項
これらの記載をした招集通知を、株主総会の日の1週間前(公開会社は2週間前)までに原則として書面で発送する必要があります。ただし、株主の承諾があればメール等の電磁的記録による通知も可能です。

要素説明
招集通知の内容日時、場所、目的事項(議題)などを決定して明記
送付期限総会の1週間前(公開会社の場合には2週間前)までに発送。
送付方法原則として書面。株主の同意があればメール等の電磁的方法も可能(会社法299条3項)。
また、当日、株主からの質問を想定して回答を準備しておくとスムーズな進行が可能になります。

4. 当日の進行と注意点

4-1. 議事進行の基本ステップ

  1. 開会の宣言
  2. 議長の選任
  3. 議決権の確認
  4. 議案の説明
  5. 質疑応答
  6. 採決
  7. 閉会の宣言

4-2. トラブルへの備え

  • 総会屋対策
    最近は総会屋と呼ばれるような輩が株主総会を乱すということは随分と減ってきている印象ですが、株主からであっても不当要求には断固とした対応が必要です。
  • 議事進行妨害
    議事進行の妨害があった場合には、まずは警告し、改善しない場合は退場を求めます。

4-3. 議事録の作成

  • 記載事項の漏れ防止
    議事内容、採決結果などを正確に記録します。
  • 署名押印
    議長および取締役の署名が必要です。

5. 法的リスクの回避とコンプライアンス

5-1. 招集手続の法的留意点

  • 法定期限の遵守
    招集通知は開催日の1週間前(公開会社は2週間前)までに発送します。
  • 適切な議題設定
    定款および法令に基づいた議題であることを確認します。

5-2. 情報開示の徹底

  • 財務情報の適切な開示
    株主の判断材料として重要です。
  • インサイダー取引防止
    秘密情報の漏洩に注意が必要です。

5-3. コンプライアンス文化の醸成

  • 社員教育の実施
    法令遵守の意識を高めます。
  • 内部監査の強化
    定期的なチェックで問題を早期発見します。

6. 株主総会後の対応とフォローアップ

6-1. 議事録の保管と公開

  • 法定保存期間
    本店で原本を10年間保存することが義務付けられています(会社法318条2項)。
  • 閲覧請求への対応
    株主からの請求があれば、閲覧を許可します(会社法318条4項)。

6-2. 決議事項の実行

  • 取締役等の役員の選任解任
    2週間以内に変更登記手続きを行います(会社法第915条1項)。
  • 定款の変更
    株主総会で定款変更についての特別決議を得て、議事録を作成した後、変更箇所が登記事項に該当する場合には、2週間以内に変更登記手続を行います。

7. まとめ

株主総会の適切な運営は、企業の信頼性向上と法的リスクの回避に直結します。弁護士のサポートを得ることで、専門的な知識に基づいた的確な対応が可能となります。法令遵守と円滑な総会運営により、株主からの信頼を獲得し、企業の持続的な発展につなげましょう。

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