知的財産権

著作権法の全体像について弁護士が解説

著作権とは

著作権というワードは耳にしたことがある方も多いと思います。少し前には漫画の違法アップロードによって「漫画村」が問題となりましたし、オリンピックの五輪エンブレムの問題、Youtubeなどの動画サイトに対する違法アップロード問題など、私たちの生活には著作権侵害に関連する問題があふれています。日本国内のみならず海外でも同様です。
しかし、著作権とは何で、どうなると著作権侵害なのかという理解が曖昧な部分も少なくないのではないでしょうか。
著作権は私たちの生活に身近な存在です。知識が曖昧なままでは、意図せず著作権侵害を起こしてしまうこともありうるし、著作権侵害をしてしまった後では、損害賠償や企業の名声・レビュテーションリスクにも大きな影響を与えることになってしまいます。
まずは、著作権法の全貌をみて全体像を把握することからはじめましょう。

著作権法の目的

 著作権法著作権を保護するための法律です。著作権には大きくわけて2種類あります。

1つが著作財産権、もう1つが著作者人格権です。

著作財産権とは、「著作権者」が他人に「著作物」を無断で「利用」されない権利のことをいいます。著作者人格権については後述します。
漫画の実写版映画化も近年では多く見られますが、この時に漫画の作者の許可が必ず必要になります。漫画の作者の著作権によって映画監督は無断で漫画を映画化することはできないのです。

このような著作権を保護する法律が著作権法ですが、その目的は著作権法第1条に以下のように記載されています。

(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

要するに著作権を保護することによって文化の発展を保護することが著作権法の目的・趣旨となります。

先程の漫画の話で考えると、仮に著作権がなかったとすると漫画の作者が一生懸命漫画を書き上げたにもかかわらず、それを出版社が無断で出版することもできるし、映画会社が無断で映画化することもできる、そしてそこで発生する利益が1円も漫画の作者に支払われないということになります。これでは、作家さんが今後、漫画を書く意欲が削がれてしまいます。
そうならないように漫画の作者に著作権を認め、無断で出版することや映画化することを禁じて、出版や映画化の都度、作家さんの許可を求めることにしました。そして、許可の際に一定の対価を支払うという契約を結べば、作家さんの今後の創作活動への意欲も保たれるし、そこでの収益によって新たな作品作りに励むことができる、こうした循環を生み出すことによって文化の発展を保護しようというのが著作権法の目的です。

著作物とは

著作物の対象をあまりにも広範囲に認めてしまうと、表現の自由を害する結果になりかねません。そこで著作権法は著作物の範囲を以下のように定めました。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

少々わかりにくいのですが

1)思想又は感情 が客体であること
2)創作的 であること
3)表現したもの であること
4)文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう  という4要件に分解します。

それぞれを簡単に説明すると

1)思想又は感情 が客体であること
思想や感情はあくまでも「人間」のものを意味します。したがって、動物やAIが創作したものは、著作権の対象にはなりません
単なる事実やデータは思想や感情とは無関係なので著作物にはなりません。例えば、「好きな卵料理ランキング 第1位は〜」のようなものは、著作物ではないということになります。

2)創作的 であること
高いクオリティを求められているわけではないのですが、誰にでも思いつくようなありふれた表現は、創作的とはいえず著作権の対象にはなりません。たとえば、時候の挨拶などは、概ね皆同じものを用いるのであって、創作的とは言えず著作物には該当しません。

3)表現したもの であること
アイディアは著作物の対象になりません

思想や感情に関するものを頭の中であれこれイメージしているだけでは足りず、小説や映像、音楽などの方法を用いて「表現」することが必要となります。
もっとも、表現とアイディアの区別はそう容易ではありません。例えば、かつて「ライオンキング」が「ジャングル大帝」の盗作ではないかと問題になりました。アフリカが舞台で、主人公がライオンという設定(アイディア)が似ているということです。当事者というよりは世間が騒ぎ立てたのですが、この問題自体は、手塚治虫さんのご子息が「似ていない」とご判断なさってライオンキングを訴えることをせず、裁判所の判断を仰ぐことにはなりませんでした。しかし、表現を抽象化していくと非常に近似する作品は多くあるということを物語っているいい例えといえます。ほかにも、憎しみあっていた男女が気がついたら互いに惹かれあって恋に落ちていくストーリ…といえばみなさんいくつか思い浮かぶ作品があるかもしれません。これはそれぞれ著作権侵害なのでしょうか。この判断は非常に難しい問題となります。

4)文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
たとえば、車やスマートフォンのような工業製品は文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属さないので著作権の対象ではありません。これらは「意匠権」という別の法律に基づく権利で保護されています。

著作権法では著作物のジャンルを以下のように定めています。上記4要件を満たすことが大前提ですが、著作物と言えるか否かの際の判断の参考になります。

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
 音楽の著作物
 舞踊又は無言劇の著作物
 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
 建築の著作物
 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
 映画の著作物
 写真の著作物
 プログラムの著作物

ちなみに「映画」という言葉ですが、著作権法上の映画は、映画館で放映されているもののみならず動画全般を意味します。

この他、

編集著作物
編集物でその選択や配列によって創作性を有するもの
例:百科事典、判例集、新聞等
新聞についていえば、その記事のひとつひとつに著作物性が認められますが、それをどこにどのように配置するか、という点についてもこの編集著作物によって著作物性が認められています。

データベースの著作物
データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの
見出しや階級等の構成を工夫した各種データベースのことをいうので、なんでもかんでも詰め込んで羅列しただけのものは著作物性のあるデータベースとはいえません。

二次的著作物
著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案することにより創作したものは、原著作物とは別の著作物として保護されます。

著作権を主張できるのは誰か

 実際に作品を創作した者(著作者)が著作権を有する「著作権者」となり、原則は著作者=著作権者です。特許などと異なり、著作権は登録する必要がなく作品と同時に発生する権利です。
実際に作品を創作した人物が著作権者となるので、アイディアを提供しただけの人物は著作権者にはなりません。
また、製作費用を出資した人物、創作を発注した人物も著作権者とはなりません。多額の開発費用を支払ってある人物にプログラミングを依頼した場合、いくら出資していたとしても、そのプログラミングの著作権は製作者にあるということです。

著作財産権は譲渡が可能です。
上記のような場合、発注者がプログラミング作成者から、著作権の譲渡を受けることは可能です。通常は、システム開発を依頼する契約を結ぶ際、そうした成果物の著作権が誰に帰属するかということを定め、事後的なトラブルを防ぎます。著作権が譲渡されたときに著作者が著作権者ではなくなります。

著作財産権は相続する
著作権者が死亡したのち、著作権は相続人に引き継がれます。のちに解説するように著作物には保護期間があるのですが、その期間内であれば、土地建物などと同様に相続の対象となります。

例外
原則は、創作した者が著作権者となりますが、例外もあります。

1)職務著作
会社や役所など組織に属する人物が創作した場合で、一定の要件を満たす場合には、作成した人物ではなく会社や役所等の組織に著作権が帰属します。
簡単に言えば、会社等からの命令や企画に基づいて作成し、会社の名義で公表したものは会社の著作物になります。

2)映画の著作物
映画の場合には、製作を企画し製作費を負担した映画製作の責任者が著作権者となります。
映画の場合、監督やプロデューサーのように映画全体の構成等について関与した者は著作者にはなりますが、著作権者にはなりません。

著作者人格権とは

著作権には著作財産権(「著作権者」が他人に「著作物」を無断で「利用」されない権利)と著作者人格権があることは先述のとおりです。
ここでご説明する著作者人格権とは、簡単に言ってしまえば文字通り「人格」にかかわる権利であって、要するに著作者の想いやこだわりを保護する権利のことです。
したがって、譲渡相続の対象になるのは著作財産権であり、著作者人格権は譲渡や相続の対象にはならず、著作者のみが保有することのできる権利ということになります。
つまり、ある漫画の著作者Aさんが、「この漫画の著作権をBさんに譲渡する」という約束をBさんとしたとしても、あくまでBさん譲渡されるのは漫画についての著作財産権のみであって、依然として著作者人格権はAさんのもとに残ります。したがって、Bさんがこの漫画をドラマ化するとしてもAさんの漫画に対する思いやこだわりという著作者人格権を害さないように気をつけなければならない、ということになります。

著作者人格権の種類

公表権(著作権法18条)
著作者が著作物を公表するかしないか、公表する場合にはいつ、どのように公表するかを決定することができる権利のことを言います。
したがって、漫画家Aさんが書き上げた漫画は、1年の始まりである1月1日に出版したいと考えていた場合、出版社が恋愛漫画だからクリスマスイブだな、という感じで12月24日に勝手に出版をしてしまうことはAさんの公表権を侵害することになります。
もっとも、公表権に関しては例外規定もあり、まだ公表していない著作物の著作権を誰かに譲渡した場合には、公表することに同意したものと推定されてしまうので、公表のタイミングにこだわりがある場合には、契約書等でその旨をしっかり明記しておく必要があります。

氏名表示権(著作権法19条)
著作物を利用する際に著作者名を表示するかしないか、するとしたらどのように表示するかを決めることができる権利のことをいいます。
具体的には、①実名、②ペンネーム(変名)、③匿名(=表示しない)のいずれかを選択します。
この氏名表示権にも例外規定があり、

著作権法19条3項
著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。

との記載があります。
これによって、店内のBGMで音楽を利用する際に、著作者の氏名を公表する必要がなくなっています。

同一性保持権(著作権法20条)
著作物の題号(タイトル)や内容を意に反して改変されない権利です。
この同一性保持権についても例外規定があります。
著作権法20条2項
1号 教科書等に著作物を掲載する場合の教育上やむを得ない用字等の変更
(漢字表記をひらがなに変更する等)
2号 建築の増築等
(耐震工事に伴い、建築物に改変が生じる等)
3号 コンピュータプログラムのデバッグやバージョンアップ
4号 著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

著作者人格権については以上の3点ですが、「みなし侵害」についても注意が必要です。

上記3つの著作者人格権を侵害していなくても、著作者の名誉または声望を害する方法によって著作物を利用する行為は著作者人格権を侵害する行為をみなす、というものです。
たとえば、芸術作品として創作した女性の裸体を含むイラストを、性風俗店の宣伝のために利用する場合などがこれに該当します。

著作財産権

著作財産権「著作権者」が他人に「著作物」を無断で「利用」されない権利ですが、その利用されないようにコントロールできる範囲は以下のもの限定されています。

複製権
 他人に無断で著作物を複製(コピー)されない権利
 複製には海賊版のように全く同一のものを作成するだけではなく、よく似た別の作品を作成することも含まれます。

演奏権・上演権
 無断で公衆に直接聞かせるために演奏させない権利、無断で公衆に直接見せるための上演させない権利 

上映権
 無断で著作物を公衆に直接見せることを目的として映写されない権利

公衆送信権・公の伝達権
 公衆送信権は、無断で著作物を放送・有線放送やインターネット配信されない権利のことをいい、公の伝達権は、公衆送信される著作物を受信装置を使って公衆に直接見聞きさせる目的で伝達されない権利を言います。
要するに、テレビやインターネット、ラジオ等で著作物を公衆に送られない権利のことを言います。もっとも家庭用のテレビ等を用いてテレビやラジオを聞かせることについては、著作権者の許可が不要となっているので、病院の待合室等でテレビを見せたりすることについては問題となりません。

口述権
 無断で小説や詩などの言語の著作物を公衆に直接聞かせるために口述(朗読)されない権利

展示権
 美術の著作物のオリジナル作品や未発表の写真を公衆に直接見せるために展示されない権利

頒布権
 映画の著作物の複製物(フィルムやDVD等)を無断で売ったり、あげたり、レンタルしたりされない権利

譲渡権
 映画以外の著作物の原作品や複製物を無断で公衆相手に売ったりあげたりされない権利

貸与権
 映画以外の著作物の現作品や複製物を無断で公衆相手にレンタルされない権利

二次的著作物創作権(翻案権)
 既存の著作物(原著作物)を翻訳や編曲、変形、脚色等新たな創作性を加えて別の著作物(二次的著作物)を創作されない権利

二次的著作物の利用権
 二次的著作物について無断で各種利用されない原著作者の権利

■複製と二次的著作物の違いについて
どちらもある著作物の盗作ではあるのですが、度を超して類似しており、そこに新たな創作性が加わっていないものが「複製」で、新たな創作性が加わっているものが二次的著作物になります。

■どこまで似ていた場合には、著作権侵害となるのかという点については「著作権侵害」という記事にて解説をしています。判断基準が難しく、裁判例が沢山あるのでで具体例を見つつ参考にして頂ければと思います。

著作隣接権・出版権

著作権は著作者の権利ですが、著作物の伝達に重要な役割を果たしている者に認められた権利として著作隣接権というものがあります。
たとえば、ある楽曲を例に考えると、そこには①曲、②歌詞、③歌手による歌唱、④演奏者による演奏の4つの権利らしきものを考えることができますが、著作権で保護することができるのは①②のみです。この場合に③④を保護するために著作隣接権が定められています。
著作権法においては、著作隣接権は実演家レコード製作者放送事業者有線放送事業者の権利のみを規定しています。

実演家
歌手や俳優、ダンサー等パフォーマーのことです。
<実演家人格権>譲渡不可

氏名表示権(90条の2)自分の実演に名を表示するか否か、するとしてどのような表示をするか
同一性保持権(90条の3)実演家の名誉または声望を害する改変をされない権利

<著作隣接権>譲渡可能

録音権・録画権(91条)無断で自分の実演を録音・録画されない権利
放送権・有線放送権(92条)無断で自分の実演を放送・有線放送されない権利
送信可能化権(92条の2)自分の実演を端末からのアクセスに応じて自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利
譲渡権(95条の2)無断で自分の実演の録音物や録画物を公衆に譲渡されない権利(一度適法に譲渡された場合はその後の譲渡に権利は及ばなくなる)
貸与権(95条の3)無断で自分の実演の商業用レコードを貸与されない権利(販売から1年間に限る)

その他

放送二次利用料を受ける権利(95条)商業用レコードが放送や有線放送で使用された場合の使用料(二次使用料)を、放送事業者や有線放送 事業者から受ける権利
貸しレコードについて報酬をうける権利(95条の3)1年を経過した商業用レコードが貸与された場合に、貸レコード業者から報酬を受ける権利

レコード製作者 
音源を最初に録音した者
<著作隣接権>譲渡可能

複製権(96条)無断でレコードを複製されない権利
送信可能化権(96条の2)レコードを端末からのアクセスに応じて自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利
譲渡権(97条の2)無断でレコードの複製物を公衆に譲渡されない権利(一度適法に譲渡された場合はその後の譲渡に権利は及ばなくなる)
貸与権(97条の3)無断で商業用レコードを貸与されない権利(販売から1年間に限る)

その他

放送二次利用料を受ける権利(97条)商業用レコードが放送や有線放送で使用された場合の使用料(二次使用料)を、放送事業者や有線放送 事業者から受ける権利
貸しレコードについて報酬をうける権利(97条の3)1年を経過した商業用レコードが貸与された場合に、貸レコード業者から報酬を受ける権利

放送事業者 
放送を反復継続して行う者
<著作隣接権>譲渡可能

複製権(98条)放送された音や映像を無断で複製されない権利
再放送権・有線放送権(99条)無断で放送を再放送、有線放送されない権利
テレビジョン放送の伝達権(100条)無断でテレビジョン放送を受信して画面拡大する特別装置で公に伝達されない権利

有線放送事業者 
有線放送を反復継続して行う者
<著作隣接権>譲渡可能

複製権(100条の2)有線放送を録音・録画等の方法で無断で複製されない権利
放送権・再有線放送権(100条の3)無断で有線放送を放送、再有線放送されない権利
有線テレビジョン放送の伝達権(100条の4)無断で有線テレビジョン放送を受信して画面拡大する特別装置で公に伝達されない権利

出版権

著作権のうち「複製権」を有する者が、当該著作物を独占的に出版する権利を第三者に設定することをいいます。方法は紙媒体やDVD-ROMという媒体に複製する方法と電子出版としてインターネット配信する方法とがあります。
この出版権は、契約をして権利の設定をして初めて発生するものです。これまでの権利のように自動的に取得する権利とは異なります。また、著作権者が契約によって第三者に出版権を設定した場合には、著作権者は出版に関する権利を行使することができなくなります。
この出版権を有する者は、一定期間内に出版をする義務を負うことになっていますので、とりあえず出版権を設定するということは認められていません。

権利制限

基本的に著作権は「無断で〜されない権利」ですが、無断で〜してもいい権利として権利制限規定が設けられています。

私的使用のための複製(法30条)
自分自身や家族など限られた範囲内で使用するためには著作物を複製することができます。ただし、デジタル方式の録音・録画機器等を用いて著作物を複製する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要となります。
コピープロテクション等技術的保護手段の回避装置などを使って行う複製は、私的複製であって著作権者の許諾が必要です。また私的使用目的のための複製であっても、違法著作物であることを知りながら音楽又は映像をインターネット上からダウンロードする行為は、権利制限の対象から除外されます。

付随対象著作物の利用(法30条の2)
写真の撮影、録音、録画にあたって、撮影等の対象とする事物から分離することが困難なため、いわゆる「写り込み」の対象となる他の著作物(付随対象著作物)は、例外的に利用(複製または翻案)することが認められています。ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合を除くことになります。

検討の過程における利用(法30条の3)
著作権者の許諾を得て、又は著作権法上の裁定を受けて著作物を利用しようとする者は、その利用を検討する過程においては、必要と認められる限度で当該著作物を利用することができることになっています。企画書等にキャラクターを掲載させる場合などがこれに当たります。

著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(法30条の4)
技術開発・試験、情報解析の目的あるいは、著作物の表現についての人の近くによる認識を伴うことなくコンピュータの情報処理の過程で利用する場合など、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合に著作物を利用でます。

図書館等における複製(法31条)
法令で定められた図書館などに限り、利用者に対し複製物の提供を行うことができます。

引用(法32条)
引用の目的上正当な範囲内で自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができます。

教科用図書等への掲載(法33条)
学校教育の目的上必要と認められる限度で著作物を教科書に掲載できますが、著作者への通知と著作権者への一定の補償金の支払いが必要となります。

教科用図書代替教材への掲載等(法33の2)
教科書をデジタル化したデジタル教科書においても前項同様に掲載することができますが、教科書用図書発行者への通知と著作権者への一定の補償金の支払いが必要となります。

教科用拡大図書等の作成のための複製等(法33の3)
教科書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により、教科書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生徒の学習の用に供するため、当該教科書に用いられている文字、図形等を拡大その他必要な方法により複製することができます。ただし、営利目的で当該拡大教科書を販売する場合には、著作権者への一定の補償金の支払いが必要となります。

学校教育番組の放送等(法34)
学校教育番組において著作物を放送することができます。また、学校教育番組用の教材に著作物を掲載することも可能です。ただし、著作者への通知と著作権者への一定の補償金の支払いが必要となります。

学校その他の教育機関における複製等(法35)
教育を担任する者及び授業を受ける者は、授業の過程で利用するために著作物を複製し、公衆送信や公の伝達をすることができます。
※ただし、公衆送信(遠隔授業のための同時配信を除く)を行う場合には、教育機関の設置者は一定の補償金の支払いが必要です。

試験問題としての複製等(法36)
入学試験や採用試験などの問題として著作物を複製し、又は公衆送信を行うことができます。ただし、営利目的のための利用は、著作権者への一定の補償金の支払いが必要です。

視覚障害者等のための複製等(法37)
公表された著作物を点字によって複製することができます。また、パソコンによる点字データの保守やネットワーク通信による送信ができます。
視覚障害者その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物で、かつ、視覚により表現が認識される方式で公衆に提供されている著作物を、視覚障害者等が必要と認められる限度や方式により複製し、又は公衆送信することができます。

聴覚障害者等のための複製等(法37の2)
聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害がある者の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物で、かつ、聴覚により表現が認識される方式で公衆に提供されている著作物を、聴覚障害者等が必要と認められる限度や方式により複製し、又は公衆送信することができます。

営利を目的としない上演等(法38)
営利を目的とせず、観客から料金をとらない場合は、著作物の上演・演奏・上映・口述(朗読)などができます。ただし、出演者などは無報酬である必要がある。

時事問題に関する論説の転載等(法39)
新聞、雑誌に掲載された時事問題に関する論説は、転載禁止の表示がなければ、ほかの新聞、雑誌に掲載したり、放送したりできます。

政治上の演説等の利用(法40)
公開の場で行われた政治上の演説や陳述、裁判での公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き利用できます。

時事の事件の報道のための利用(法41)
時事の事件報道の場合は、事件を構成し、又は事件の過程で見聞きされる著作物を利用できます。名画の盗難事件を報道するためにその絵の写真を新聞に載せるような場合などがこれに当たります。

裁判手続等における複製(法42)
裁判の手続きのためや、立法、行政上の内部資料として必要な場合もしくは特許、意匠、商標、実用新案、薬事に関する審査等の手続きのために、著作物を複製することができます(著作権者の利益を不当に害することとなる場合を除く)。

行政機関情報公開法等による開示のための利用(法42の2)
行政機関情報公開法や情報公開条例により開示する場合には、著作物を複製したり、再生したりすることができます。

公文書管理法による保存等のための利用(法42の3)
国立公文書館の館長等は、公文書管理法や公文書管理条例により歴史公文書等の保存を目的とする場合には、必要と認められる限度において、当該著作物を複製することができます。また、著作物を公衆に提供し、又は提示を目的とする場合には、必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができます。

国立国会図書館法によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製(法43)
国立国会図書館館長は、インターネット資料を収集するために必要と認められる限度において、インターネット資料に係る著作物を国立国会図書館で使用するための記録媒体に記録することができます。また、国立国会図書館の求めに応じてインターネット資料等を提供する場合には、必要と認められる限度において、複製することができます。                       

放送事業者等による一時的固定(法44)
放送事業者などは、放送のための技術的手段として著作物を一時的に固定することができます。

美術の著作物等の原作品の所有者による展示(法45)
美術の著作物又は写真の著作物などの原作品の所有者は、その原作品を展示することができます。

公開の美術の著作物等の利用(法46)
建築物や公園にある銅像などの常に設置されているものは写真撮影したり、テレビ放送したりすることができます。

美術の著作物等の展示に伴う複製等(法47)
美術又は写真の著作物の原作品による展覧会の開催者は、観覧者のための解説、紹介用の小冊子などに、展示する著作物を掲載し、上映し、自動公衆送信できます。

美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(法47の2)
オークション等で美術品あるいはその複製物を出品する際、商品紹介のための画像掲載について、著作権者の利益を不当に害しないために政令で定める措置を講じることを条件に、著作物を複製・自動公衆送信することができます。

プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(法47の3)
プログラムの複製物の所有者は、自らコンピュータで実行するために必要と認められる限度において、でプログラムを複製することができます。

電子計算機における著作物の利用に付随する利用等(法47の4)
コンピュータ記録におけるキャッシュのための複製、自動公衆送信の遅滞・障害防止のための複製、ネットワークでの情報提供準備に必要な情報処理のための複製など、コンピュータを円滑に利用することを目的とする場合には、必要と認められる限度において利用することができます。また、内蔵する機器の保守・修理を行う場合、記録されている著作物のバックアップのために一時的に複製することができま。

電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(法47の5)
検索情報サービス、所在検索サービス、情報解析サービス、その他政令で定めるサービスを行う者は、必要と認められる限度において、情報処理の結果の提供に付随して、軽微な利用が可能です。

翻訳、翻案等による利用(法47の6)
私的使用のための複製、教科書への掲載、学校教育番組の放送、学校における複製、視聴覚障害者のための複製等に該当する場合には、当該著作物の利用のみならず、その翻訳、編曲、変形、翻案としての利用も同様に行うことができます。

保護期間

原則として著作者の生存期間およびその死後70年です。

著作権法改正に対応し、保護期間が延長されました。

例外として

無名・変名の著作物;公表後70年

団体名義の著作物:公表後70年

映画の著作物:公表後70年

とされています。

著作権法改正

2021年1月1に施行した改正著作権法においてはインターネット上の海賊版対策の強化として、以下の2つに取り組んでいます。
1)リーチサイト対策
「リーチサイト」とは、違法にアップロードされた著作物などのリンク情報を提供するウェブサイトのことをいいます。
・公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト
・公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるウェブサイト

この要件を満たすリーチサイトを運営する行為は刑事罰(5年以下の懲役、500万円以下の罰金)の対象となりました。
またリーチサイトに侵害コンテンツのリンクを掲載すると著作権侵害行為とみなされ、民事上(差止請求・損害賠償請求)、刑事上(3年以下の懲役、300万円以下の罰金)を負う可能性があります。なおこの刑事罰は親告罪なので被害者である著作権者による告訴がない場合には刑事上の責任を負うことはありません。

2)侵害コンテンツのダウンロード違法化
これまでは、違法アップロードが違法とされており、ダウンロードについては違法にアップロードされていると知った映像や音楽のみが違法の対象とされていますた。しかし、今回の改正によって映像や音楽のみならず、書籍や漫画、ソフトウエアのプログラムなど著作物全般についての違法ダウンロードが規制対象になりました。
また侵害コンテンツのダウンロードを反復継続して行った場合、2年以下の懲役、200万円以下の罰金という刑事罰を負う可能性があります。

まとめ

著作権法についてざっと一通り解説をしました。
気がつかないうちに著作権侵害をしている、あるいはされている可能性があります。
法改正も含め著作権およびその周辺の権利について意識をしておくことが、大きなトラブルの未然防止の第一歩になると思います。

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