債権回収

債権回収を弁護士に依頼するメリットと回収の10の方法

1 債権回収の重要性

  商品の代金等の売掛金の未収や貸付金や家賃の滞納金等の債権回収は、法律問題である前に経営問題であるといえます。単純な金銭の貸し借りだけでなく、売掛取引、請求書発行業務がある事業を行なっている場合には、債権を実際に回収できるかどうかは、経営にとって重要であるキャッシュフローに多大な影響を与えるからです。

  そのため、現金取引しかしていない場合を除いて、多くの企業にとって債権回収の成功率を上げる(失敗率を下げる)ことは、死活問題といっても過言ではありません。

  この記事では、いま現在未収となっている債権がある企業や事業者の皆さんにはもちろん、債権の未収が発生しうる多くの企業や事業者の方にとって分かりやすいように債権回収の方法や基礎知識を解説します。

2 債権回収の基本

  債権回収は、法律的に存在する権利である債権を、金銭またはそれに近いもの(銀行預金等)に現実化して回収することをいいます。

  債権の未収という問題は、およそ債権という考え方が妥当する取引全てで発生しうるものです。そのため、債権の未収を発生させてないためには、担保の提供や公正証書作成等、考えうるあらゆる手を売っておくことが理想といえそうです。しかし、現実には、金融機関の貸付 全ての取引でそのような手段を取ることは手間がかかりすぎて現実的ではないですし、相手方の協力が得られないことも多いでしょう。そのため、債権の未収に備えて担保を取っておく等の行為は、取引のリスクの大きさ(債権の大きさ、未収リスクの大きさ)が一定以上ある場合に行うのが一般的であり、実際に多くの債権未収案件では、このような担保等の事前の予防策は取られていません。

  そのため、多くの債権回収のシーンでは、そのような担保がない中で、どれだけの権利を実現できるかという勝負になります。その勝負の勝率を少しでも上げるためには、債権回収の方法としてどのようなものがあるのかを把握しておく必要があります。

3 債権回収の方法

(1)前提知識


   債権回収の方法について確認する前に、債権を「強制的に」現実化して回収するには、原則として、判決書、調停調書、強制執行受諾文言付公正証書等の「債務名義」を取得した上で、「強制執行」手続を踏む必要があります。ただし、担保権を設定していた場合には、上記のような債務名義を持っていなくても強制執行することができます。

   そのため、債権の未収が発生した場合には、その債権に担保権があるかどうかの判断、担保権がない場合には債務名義があるかどうかの判断を経て、取るべき手段を検討することになります。

(2)話し合いで回収する(任意の回収)

ア 何はともあれ請求から


   入金予定日に入金がない場合、まずは相手方に対して支払いの遅れがあることを指摘して、すぐに支払ってくれるよう連絡することが重要です。支払いの遅れがあるという場合、単にうっかりというケースもありますが、相手が資金繰りに困っている場合、放置している債権者より請求をしてくる債権者への支払いを優先することが多いからです。

   まずは、電話等による連絡や、請求書の再発行などで対応していくことになりますが、それでも相手が支払わない場合には、内容証明郵便を発送したり、顧問弁護士に依頼して弁護士名で請求してもらうということも検討すべきです。

   相手が倒産しない限りは、相手が全ての債権者への支払いを停止している状態ということは考えにくく、債権者にそれぞれ優先順位をつけて支払いをしている可能性が高い状態です。任意の交渉の段階では、何はともあれ、こまめに請求を繰り返し、相手にとって自身への返済の優先順位を上昇させることを目指すべきでしょう。

  イ 「支払う」と言われたら文書化する

   執拗に請求を繰り返していると、相手から「〜日までに支払う」などと言われることがあります。この場合、その日までただ待つということもできますが、相手の言っていることが真実とは限らないため、「〜日までに支払う」という内容をしっかりと文書にしておくことを目指します。

   文書化する理由は、①書面にすることで自身の債権の重みづけを行う、②消滅時効の更新(債務の承認)を明確にする、③遅延損害金等の規定を盛り込むことで弁済のインセティブを作るというのが主な理由となります。また、複数の債権の支払いが滞っている場合には、それらを1つにまとめて準消費貸借契約を締結することも検討します。

  ウ 相手の債権や財産から回収する

   実際に相手からの支払いを受ける以外にも債権回収をする方法として、①相殺、②債権譲渡、③代理受領・振込指定、④代物弁済などがあります。これらの方法を使えば、相手に弁済のための手持ち資金がない場合でも債権回収を現実化できるため、必ず押さえておきたい方法です。

   まず、最も有効な方法が相殺による回収です。相殺(そうさい)というのは、相手に対してこちらが負っている債務と、相手がこちらに負っている債務(回収したい債権)を対等額で打ち消すことをいいます。実際に現金回収をするわけではありませんが、債務を帳消しにすることで同じ効果を得ることができます。これを相殺の担保的機能といい、相互に支払いの発生する取引先からの回収については相殺による回収ができることが多いため、未収が発生した場合にはまず相殺可能かを必ず検討するようにしましょう。

(3)強制的に回収する(強制執行)


   現在の日本では、相手が債務を履行しないからといって、自らの力で強制的に回収行為を行うことは許されていません。これを自力救済の禁止といいます。そのため、権利があっても任意の履行がされない場合には、裁判所を通じて権利の存在を確定させた上で、さらに裁判所を通じで相手の財産を差し押さえて強制的に回収する手続(強制執行手続)を採ることになります。

ア 民事保全手続

   ただし、権利を確定する裁判手続を完了することにも一定程度の時間がかかります。そのため、この裁判手続を取っている間に相手の財産が散逸したり隠匿されたりするリスクがあります。このようなリスクを回避するために、保全手続といって、仮差押や仮処分という、仮に相手の財産を差し押さえる手続を取ることができます。

   もっとも、このような手続を取るには、通常は弁護士への依頼が必要になるため、コストがかかってしまいます。そのため、保全手続を取るかどうかは、費用対効果を考えて個別に判断していくことになります。

イ 裁判手続

  権利を確定して強制執行を可能とするための裁判所を通じた手続にも種類があります。確定させたい権利の種類や額、相手の態度によって用いるべき裁判所の手続も異なります。裁判手続には、通常訴訟、少額訴訟、民事調停、支払督促などがあります。また、手形債権の回収については手形訴訟という手続もあります。

  通常訴訟は、請求額(訴額)が140万円を超える場合には原則として相手の所在地の管轄地方裁判所に提起することになり、140万円以下の場合には相手の所在地の管轄簡易裁判所に提起します。

  少額訴訟は、訴額が60万円以下の場合に使える制度で、原則として1回の審理で証拠調べを行い、判決が出されます。

  民事調停は、第三者を入れた話し合いの場です。訴訟を提起しても証拠の問題等で勝訴見込みが相対的に低い場合で、第三者が間に入ることで話し合いがまとまる可能性がある場合に用いることが多い手続です。

  支払督促は、請求する権利が金銭債権の場合に使える手続で、申立人の申立書類のみに基づいて裁判所書記官が支払督促状を相手に送達する手続で、相手が何もしなければ仮執行宣言の申立を行って支払督促に仮執行宣言を付してもらうことで強制執行を可能にします。ただし、相手から異議が出された場合には、通常訴訟に移行します。

ウ 強制執行

  判決書等の債務名義を得ても相手が支払いをしない場合には、強制執行(民事執行手続)に移行します。強制執行は、相手の財産を換金して債権の回収を実現するプロセスです。基本的な流れとしては、財産の差押えから換金という扱いになります。強制執行の対象となる財産には、債権、不動産、動産があり、それぞれに対する強制執行手続を、債権執行、不動産執行、動産執行と呼びます。

  債権執行をするには、債務者の所在地(住所地)の地方裁判所に債権差押命令の申立てを行い、同時に第三債務者に対する陳述催告の申し立ても行います。債権差押命令が債務者に送達された日から1週間(差押えの対象が給与等の債権である場合は4週間)が経過すると、債権者は第三債務者から直接債権を取り立てることができます。

  不動産執行をするには、不動産の所在地の地方裁判所に不動産の強制競売の申立てを行います。これを受けて裁判所はその不動産に差押えの登記をして、物件調査の上で入札等の方法でその不動産を売却し、債権者はその売却代金から債権を回収します。

  動産執行をするには、動産の所在地の地方裁判所の執行官に動産執行の申立てを行います。これを受けて執行官が動産の差押えを行って換価し、債権者は執行官から配当を受けることで債権を回収します。

(4)担保権を行使して回収する(担保権実行)

担保権がある場合には、裁判等の権利確定の手続を経ることなくいきなり強制執行手続に入ることができ、さらに担保権を有していない一般債権者よりも優先して回収を受けることができます。このように、担保権は債権回収に極めて有用な権利ですが、担保権には、法律上当然に発生する担保権と、当事者の合意によって設定される担保権があります。

ア 法律上当然に発生する担保権

 法律上当然に発生する担保権としては、動産売買の先取特権や留置権があります。

  動産売買の先取特権は、動産を売却した場合にその代金が支払われない時に成立する担保権であり、対象となる動産が取引先にある場合には動産競売の申立てをして配当金から債権を回収することができますし、転売された場合に転売代金が支払われていない時には物上代位によってその転売代金債権を差し押さえて転売先から債権を回収することができます。

  留置権は、自分が占有している他人の物に関して生じた債権を有している場合に、その債権が支払われるまではその物を留置できる権利です。留置権には、民事留置権商事留置権があります。競売による回収もできなくはないのですが、債権回収できるまで留置物を引き渡さないとして弁済を心理的に強制する力があります。

イ 当事者の合意によって設定される担保権

  当事者の合意によって設定される担保権には様々なものがあり、物的担保として、抵当権・根抵当権、質権、所有権留保、動産譲渡担保・集合動産譲渡担保、集合債権譲渡担保などがあり、人的担保として保証人があります。

  抵当権・根抵当権は、不動産に設定される担保権であり、債権の支払いがされない場合に、裁判所に対して担保不動産競売や担保不動産収益執行の申立てをして競売代金から債権回収ができるものです。

  質権は、動産、不動産、債権などに設定できる担保権です。不動産の場合は抵当権の設定がされることが多く現在ではほとんど使われていません。動産の場合には現在でも質屋等で質権設定が行われています。債権質は、債務者または第三者が第三債務者に対して有する債権に質権を設定するものであり、確定日付ある通知によって第三債務者に質権設定の通知をするか第三債務者がこれを承諾しない限り、第三債務者及びその他の第三者に対抗できません。

  所有権留保売買は、所有権を売主に留保しながら売買の目的物を引き渡し、取引先が代金の支払いを怠った場合には、所有権に基づいて売買の目的物を取り戻してこれを売買代金債権にあてることができる方法です。

  動産譲渡担保・集合動産譲渡担保は、動産譲渡担保は、債務者の特定の店舗や大型機械、倉庫内の在庫品などしかめぼしい財産がない場合に形式上それらの動産を債権者に譲渡しつつ使用収益や在庫販売を認める方法による担保です。

  集合債権譲渡担保は、継続的取引の当事者間で、現在の債権及び将来発生する債権を一括して譲渡担保の目的物とする場合をすることをいいます。

  保証人は、ある債務者が債務の履行をしない場合に、債務の履行を請求される立場にある人のことです。連帯保証の場合には、債務者が債務の履行をするしないに関わらず履行請求されてもおかしくない立場にあります。保証には、通常の保証、連帯保証、根保証などがありますが、いずれの場合も回収手段は同様です。


(5)相殺により回収する

   これまで見てきた担保権は、一定の場合に限定的に生じる法定担保か、予め当事者の合意が必要な約定担保でしたが、いずれも場面が限定的であったり合意や対抗要件の具備が必要であったり、何より実行するのに手間がかかるというデメリットがありました。

   実行の容易性という意味で最強の担保と言っても良いのが相殺です。相殺は、相手から自分への債権と自分から相手への債権を打ち消すことで自分から相手への債権を実質的に回収するものです。基本的には、自分から相手への債権の支払期限が到来していれば、相手の合意も得る必要はなく一方的な意思表示で相殺することができ、意思表示の方法に制限もないため、非常に簡単に債権回収できる方法と言えます。

   そのため、債権の未収が発生した場合には、何はともあれ相殺できないかをまず検討すべきであり、未収が発生しているのに相手から自分への債権の支払いをしてしまうということは避けるべきです。

4 相手が倒産した場合の債権回収

  債権回収の場面では、相手方(債務者)に資力がない又は乏しい場面がほとんどであり、場合によっては、破産手続や民事再生手続等の法的な債務整理(倒産手続)を行うこともあります。

(1)正確な情報をいち早く

  そのような場合でも、倒産されたら終わりと諦める前にやるべきことがあります。それは、まず倒産の情報の真偽を含めた詳細の確認です。倒産の種類によって取るべき対応が異なることから、まずは正確な情報を早くつかむことが重要です。そのためには、取引先の本社や工場、倉庫などの重要施設に実際に出向いて現場の様子を確認することが有用です。

(2)倒産の種類を把握する

  倒産したという場合に確認すべきポイントは、①法的整理なのか任意整理なのかという視点と、②清算型なのか再建型なのかという視点になります。これらを意識することで、それに応じた対応方法を取ることができます。

(3)法的整理と任意整理の視点

  法的整理の場合、債権者としてはその法的手続の中でしか回収できません。とはいえ、担保権がある場合や相殺が可能な場合は、ほとんど通常の場合と同様に債権回収を進めることができるため、できることを把握してできることを行なっていくということが必要です。

  任意整理は、その名の通り、その手続に参加するもしないも債権者の自由です。任意整理手続での回収(通常は債権額より少額)が得策であるかどうかを判断して、その手続内での回収を図るか、あくまで強硬策で法的手段によって回収を図るかを選択することになります。ただし、後者を選択して結果的に債務者が法的整理に移行してほとんど回収できないという場合もあります。また、法的整理前に回収した場合でも破産管財人からその回収行為を否認されるということもあります。

(4)清算型と再建型の視点

   債務整理の法的整理の中には、清算型と再建型があります(任意整理の場合は通常は再建型です。)。

   清算型の場合には、管財人等が債務者の財産を換価して債権額に応じて債権者に配当を行って清算します。この中では法律によって認められた範囲で粛々と回収を進めるしかありません。

   再建型の場合には、一定程度債務を圧縮した上で、相手は事業を継続しながらその利益からその圧縮された債務を返済する計画を立て、その計画通りの返済をしていくことになります。しかし、計画通りに事業を再建できないことも多く、結局は清算手続に移行することもあります。この場合、再建手続に協力していくべきか、協力せずに直ちに清算に追い込むべきか等を判断しながら、債権回収の方法を検討することになります。   

5 債権回収を弁護士に依頼するメリット

  以上のように、1口に債権回収と言っても、相手方の状況、担保権や相殺権の有無などを確認しながら適切な方法によって回収を目指さなければ、十分な結果を得ることはできません。

  しかし、上記のように債権回収に関わる法律の規制は一般の方にとっては複雑で、自分で行うのでは限界があります。自分で行おうとして色々と調べているうちに相手の資力がどんどん悪化していき回収できない状況になるというのは避けたいところです。

  その意味で、専門家である弁護士に債権回収の依頼をすることは、適切な回収、すなわち、迅速に十分な額を回収するためには極めて合理的な手段といえるのです。もちろん、弁護士に依頼した場合には弁護士費用・弁護士報酬がコストとして発生しますが、全く回収できない可能性との兼ね合いでそのコストに十分な期待値を持てるかという観点から、依頼するしないということを判断すると良いでしょう。また、事業によってはどうしても一定数は未収案件が発生するという場合もあります。その場合には、顧問契約などの継続的契約を締結することで、1件あたりの弁護士費用等のコストを抑えることもできます。

  弁護士法人えそらでは、債権回収は事業者にとって極めて重要であるという考えから、債権回収業務に注力しています。債権回収のご依頼、ご相談をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

6 債権回収するための10の方法

  弁護士に債権回収を依頼した場合、通常は、以下のような10の方法により債権回収を図ります。ただし、必ずこの順序で行うものでなく、また⑤〜⑧は通常は選択的に行います。

(1)弁護士が電話等で督促する

  弁護士から連絡があることで、債権者の本気度が債務者に伝わり、このまま支払いをしないでいると裁判等になるというプレッシャーを債務者に与えることで、債権回収が実現する場合があります。

(2)弁護士が内容証明等の郵便で督促する

  電話での対応では、その場しのぎの対応をする債務者もいますし、そもそも電話番号が分からないという場合もあります。そのような場合には、弁護士は職務上請求等の方法で債務者の住所を調べて内容証明等の郵便での請求を行います。

  内容証明郵便では、期限内での支払いがない場合には法的手続に移行する旨を記載することが通常であり、それに加えて法的手続に移行するのであれば譲歩することはないとか遅延損害金も併せて請求する等を記載することもあり、これにより債務者にプレッシャーを与えて早期回収を実現します。

(3)担保権・相殺権を実行する

  担保権や相殺権がある場合には、これを実行することで債権回収を図ります。相殺権や留置権の主張は比較的容易に行うことができるため、優れた債権回収方法です。裁判を通した担保権実行手続が必要な場合もありますし、担保が毀損することもあるため、いずれにしても担保権や相殺権があるからと言って安心するのではなく、早め早めに動いていくべきです。

(4)保証人に請求する

  債務者に保証人がついている場合には、保証人に対して請求することができます。ただし、保証人が連帯保証人である場合には請求することは全く問題ないのですが、通常の保証人の場合にはまずは主債務者に請求しなければならない等の制約があります。

  保証人が通常の保証人であるのか連帯保証人であるのか等を把握し、適切な対応を取る必要がありますが、通常の保証人の場合であっても保証人が支払いに応じてくれれば回収することは問題ですし、保証人に連絡することで保証人から主債務者を説得して支払わせられる場合もあるため、保証人がいる場合にはとにかく保証人に連絡するということは有効です。

(5)保全処分を行う

  回収の原資となるべき資産を相手方が有している場合には、その資産である物や債権を処分しないように保全処分を取ることがあります。保全処分は、裁判所を通じてその財産の処分を制限するものであり、仮差押仮処分と呼ばれます。保全処分を行うためには、通常、一定程度の担保金の予納が必要です。

(6)民事調停を利用する

  当事者間では合意に至らないが、第三者に入って貰えば話し合いで解決できる可能性がある場合、民事調停手続を取ることがあります。ただし、弁護士が介入して後の任意交渉での回収が難しい場合には、調停での話し合いの解決が難しいという場合も多いことから、通常は、以下の⑥〜⑧のように強制的な判断を求める手続を選択することが多いように思います。

(7)支払督促を申し立てる

  支払督促とは、支払督促という書面を裁判所書記官から債務者宛に発送してもらい、債務者から異議が出なければ、仮執行宣言を付す手続きをしてその仮執行宣言付支払督促が強制執行可能な債務名義として用いることができるようになるという制度です。支払督促手続は、相手がこちらの請求を無視する等の対応を取っている場合や、債権の存在自体は明らかであるものの少額であるために回収コストをできる限り抑えたい場合などに用いられます。

(8)少額訴訟を提起する

  少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払い請求を裁判で行う場合に求めることのできるもので、原則として1回で審理を終わらせて直ちに判決を行う特別な手続です。ただし、相手が通常訴訟への移行を求めた場合には必ず通常訴訟に移行することになります。

  そのため、弁護士に依頼している場合には、少額訴訟を提起する準備も通常訴訟を提起する準備もそれほど労力は変わらないことから、通常訴訟を提起することが多いと思われます。

(9)通常訴訟を提起する

  弁護士が債権回収の依頼を受けた場合に、強制的な解決を求める手続としては、最もポピュラーな手段が通常訴訟です。ただし、裁判を提起したとしても、必ず判決に至るわけではなく、多くの場合は裁判所からの和解の勧め(和解勧試)があり、実際にその和解の勧めに双方が応じて和解となって解決することもあります(むしろ、判決となる場合より和解により解決することが多いです。)。

  訴訟手続(裁判)は権利実現のために最も適切な手段ではありますが、そのためには、自らの権利の存在を裏付けるしっかりとした証拠と法的構成が必要となります。

(10)強制執行手続を取る

  上記のような各種手続で債権額を確定させたとしても、債務者が支払ってこないということもあります。その場合には、調停調書、和解調書、確定判決書などの債務名義に執行文を付す手続きを経て、その執行文付の債務名義を用いて強制執行手続きを取ります。強制執行手続きには、不動産執行、動産執行、債権執行の3種類があります。

7 債権回収は弁護士で変わる

  債権回収について解説してきましたが、これらは債権回収における知識や方法論の一部にすぎません。これを一般の方や経営者の方が自ら理解しながら行うことは現実的には難しいところです。

  また、弁護士であれば誰でも債権回収が得意というわけではありません。やはり債権回収についての知識や経験を有する弁護士に依頼することが最も効率の良い債権回収を実現する手段であるといえます。

  弁護士法人えそらでは、債権回収は事業の基本的重要事項であるという考えから、債権回収業務に注力しています。事務所(東京)での面談相談だけでなく、ウェブ相談や電話相談にも対応しておりますので、相談者の方が全国どこの方であっても対応可能です。債権回収についてのご依頼やご相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。依頼者の方にとって最善の結果となる道筋や実現可能性を丁寧に説明させていただきます。

  なお、債権回収は法律事務であるため、代理人になることができるのは弁護士だけであり(債権額140万円以下であれば認定司法書士も可能)、行政書士その他の士業では代理できないので注意してください。

8 債権回収の弁護士費用

  債権回収を弁護士に依頼する場合の弁護士費用については、それぞれの法律事務所によって異なりますが、通常は、他の事件と同様に着手金や手数料といった依頼時にかかる報酬と成功報酬金という形で事件終了時に発生する報酬が規定されていることが多いです。また、法律相談にかかる相談料については30分5,000円〜10,000円の事務所が多いようですが、法律相談料を取らない無料相談(初回相談無料など)で対応している法律事務所もあるようです。有料相談であれば無料相談であれ、法律相談は限られた時間でアドバイスをもらいながら依頼先の弁護士を決める重要な手続ですので、相談前に現在の状況や相談内容をある程度整理して説明しやすくしておくと、相談者にとって有用なものになります。

  着手金や報酬金については、かつては弁護士会基準と呼ばれる報酬規程通りに定めている弁護士や法律事務所がほとんどでしたが、報酬の自由化によりそれぞれの弁護士や法律事務所で定められています。

  当法人の債権回収に関する着手金、成功報酬の報酬金(成功報酬金)等の金額については、こちらの表をご確認ください。

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